■予想通り、違憲判決
非嫡出子(婚外子)の相続分を、嫡出子の2分の1と定めた民法の規定(民法第900条4号)が憲法第14条の平等原則に違反し、違憲との判断が出るのではないかと、私もブログ中で述べましたが、予想通り、やはり違憲との判断が出ました。
戦後9番目の法令違憲の判決(決定)、これは画期的です。とはいえ、内外からはもっと早く違憲の判断をすべきだったとの批判もあるところです。決定内容を現段階では詳しく検証したわけではないので、まだ明確なことは言えませんが、この民法の規定を支える社会的な背景事実(これを「立法事実」などと呼びます。)が長年の間に変化し、もはや合理的な区別とは言えなくなった、ということであろうと考えられます(詳しくは、またあらためて決定内容を詳しく確認のうえ、お知らせします)。→詳細確認後の記事はここから
■違憲判断の効力は
さて、違憲判断が出たとして、その効力はどうなるのでしょうか? 決定の中では「過去に遡ってまで遺産分割などをやり直すことはできない」と、わざわざ述べられているようです。これは異例のことです。
もっとも、裁判の結果は、その訴訟を争った当事者だけに効力を持ち、それ以外の第三者には及ばないのが原則。考えてみれば、自ら法廷で争っていないのに、他人の訴訟の結果が自己に及んだのではたまりませんから、これはまあ当然です。
そして、日本では裁判所の違憲審査権は、「付随的審査権」とされています。どういうことかといえば、ある法令が憲法に違反していないかを、抽象的一般的に争うことはできず、個別の事件に付随してしか争えないということ。つまり、誰かが提起した、たとえば「○○○○円を支払え」という請求の中で、その前提あるいは理由の中で付随的に争われるに過ぎないということなのです。
したがって、その訴訟の中では、違憲とされた法令は無効(ここも、必ずしも無効でよいのか、法令の種類によっては無効とすると何も決められなくなるではないかとの議論はあります)として扱われ、嫡出子も非嫡出子の相続分も同じとして扱われることになります。
しかし、理論上、それ以外の場面では、相変わらずこの法令は(そのままでは)有効なままというのが原則なのです(そこがやっかい)。もちろん、判断の基準とされた時期以前に遡って無効になったりすることも、さらにありません。
ただし、同じ判断基準時期における同じ法令の合憲性を争って提訴すれば、おそらく裁判所では同じ判断が出るでしょうから、事実上は一般的な効力を持っているのと似た状態にはなります。だからこそ、訴え提起が増える恐れがあり、裁判所も混乱を恐れているわけです。
■といっても、最高裁の違憲の判断は非常に重い
もちろん、そうはいっても最高裁が違憲との判断を下したわけですから、その法律に基づく執行は停止し、国会はすみやかに法律を改正すべきということにはなります(なお、立法の段階で、過去に遡らせる法律を作ることも、理屈の上では不可能ではないでしょう)。
しかし、「これではせっかくの最高裁の非常に重い判断が、すぐには尊重されず不当である、違憲審査が付随的審査権であったとしても、その効果が必ずしも個別的である必要はない。一般的な効力を認めてよいはずだ」と述べる学者もいるのです。
私も、個人的には、裁判所に違憲審査権を付与した意味を考えると、その意見に賛成ですね。
この問題については、最新の記事を2本アップしております。そちらもお読みください。