消費税引き上げで、価格転嫁どうする?の問題浮上<消費税価格転嫁対策法>

■消費税率アップ

2014年4月から消費税が8%に引き上げられることが決まって、巷ではさまざま意見が飛び交い、生活不安などが取沙汰されていることはご存知のとおりですが、ビジネス上の問題としてヒートアップしているのが・・・

「消費税アップ分を価格に上乗せ転嫁できるか?」という悩み。

この問題は、かつて消費税が3%から5%にアップされた1997年にも騒がれた問題なので、ご記憶の方も多いでしょう。

価格転嫁して、消費者の理解が得られなければ、売り上げに大きな影響が出かねませんし、信頼を失うのも怖い、あるいは取引先との力関係の中で、納入先に価格転嫁を受け入れてもらうのは大変ということもあります。とはいえ消費税分を負担するのは大変です。現実に1997年の際には、多くの中小企業が価格転嫁できませんでした。それに加えて、今回の消費税アップでは、価格表示をどうするかの問題も話題となっています。

 

■気になるのは他社の動向

そこで、気になるのは、「同業他社はどうするのか?」です。

ならば、業者間で情報交換をして、場合によっては足並みを揃えればよいのではないか、との発想も生まれます。

ところがこのような行為は、通常は独占禁止法で禁止された「不当な取引制限」(同法第2条6号)、いわゆる「カルテル」に相当するため、原則としては許されません。

カルテルというと、なんだか大企業だけの話のように聞こえるかもしれませんが、そういうものではありません!中小企業だって要注意です。

■じつはカルテルもオーケー? 消費税価格転嫁対策法

ところが、あきらめるのはまだ早い、じつは・・・消費税価格転嫁についてのカルテルは例外的に許されているのです。

その根拠となるのが、消費税の引上げに際して制定された「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻止する行為の是正等に関する特別措置法」という、長い名前の法律(略して「消費税価格転嫁対策法」)。

「消費税価格転嫁対策法」は、平成25年10月1日から施行され、平成29年3月31日までの期限付きで消費税の価格転嫁がスムーズに行えるよう、さまざまな施策を定めていますが、同法12条と13条で、カルテルについて独占禁止法の適用除外が定められています。

 

■認められるのは、この2つ

認められるのは①価格転嫁そのものについてのカルテル、②表示方法に関するカルテルの2種類。ただし①については、参加する事業者の3分の2以上が中小の事業者であることが条件となります。また、いずれのカルテルについても、公正取引委員会に事前に届け出をする必要があります。

 

■とはいえ安易な同業者との会合は危険

ただ、当然ながら純粋に消費税転嫁を内容とするカルテルしか認められませんから、消費税と関係なく一律に価格を引き上げたり、あるいは、消費税の率とは異なる率を転嫁する決定なども許されないというのが、公正取引委員会の示す見解です。

独占禁止法違反が認定されると、損害賠償の責任が発生するのに加えて、課徴金が課されたり、刑事罰が科される場合もあり、非常に深刻な問題となりかねませんから、そこはぜひ慎重にお願いしたいところです。

 

■独占禁止法違反には大きな代償の危険が

近年、一般的にカルテルの問題はますますセンシティブになってきており、認定を受けた場合の課徴金の額なども深刻になっています。マーケットを海外まで広げている場合には、販路のある海外で摘発を受けるケースもあります。それだけに、同業者のトップが会合を持つこと自体すでにリスクをはらんでいると考えなければならないとの見方もあるぐらいなのです。

例外が認められているからといって、安易に会合を持つと、ついつい消費税以外のことに話が及ばないとも限りません。もし、価格転嫁カルテルを検討するのであれば、専門家の意見を聞いて行った方がよいでしょう。

公的な問い合わせ窓口としては、内閣府が「消費税価格転嫁等総合相談センター」という相談窓口も設けています。

なお、「消費税価格転嫁対策法」は、この他にも、独占禁止法や下請法の規制を強化し、「価格転嫁」の妨害行為を特定して禁止することなども規定していますから、そちらも一度ご確認のほどを。

一例を挙げれば、大規模小売店と中小の納入業者との間で消費税の価格転嫁に絡んで生じる恐れのある以下①~⑤の行為は明示的に禁止されています(法第3条)。

①減額、②買いたたき、③物品購入や役務利用、利益提供の要請、④本体価格での交渉の拒否、⑤報復行為

また、小売業者などが「消費税はサービスします」「消費税還元」など、消費税分を値引きする旨の宣伝、広告などの表示も禁止されています(法第8条)。この点は、ついやってしまいそうな話ですから、十分に注意が必要ですね。この話については、ここからもっと詳しい記事へ

 

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