時間外労働賃金の基本は、まず残業時間の正しい知識から

■残業時間は何時間? これを間違えては話になりません

法定労働時間は「一日8時間、一週間40時間」(労働基準法32条)、労働時間がこれを超える場合には、法定の割増賃金を支払う必要がある、という残業代計算の基本は、以前すでに説明しました。

時間外労働賃金の基本についての前回の説明はここから→

これをお読みになった方から、残業時間の割り出し方について問い合わせがありました。
重要なことなので、ここで補足説明しておきましょう。

■法定労働時間は、1日8時間、週40時間の枠と考える

土日が休日(日曜日が法定休日)という会社を考えた場合には、図の薄いブルーの部分が、一日8時間、週40時間、法定労働時間の枠です。この枠から、縦横それぞれ、はみ出した部分が、割増賃金の支払いが必要な残業時間と考えてください。(少し濃いブルー部分が通常の時間外賃金、濃いブルーの部分が法定休日で35%割増。さらに黄色と赤の部分が深夜の場合で、それぞれ25%の加算)。

残業時間図つまり・・・

たとえば、月曜日から木曜日までの4日間毎日10時間ずつ働いたからといって、金曜日に働いた時間が、すべて40時間超えとして割増賃金の対象になるわけではありません(そういう累積をしたのでは、月曜から木曜までの2時間の残業時間を、二重に計算に入れてしまうことになってしまいますが、二重の算入はしないのです)。ここは誤解のないように願います。

 

■法内残業

上の図が表している状態は、所定労働時間(就業規則で定められた労働時間)と、法定労働時間が一致している場合ですが、必ずしもそうとは限りません。

たとえば、所定労働時間が一日7時間の場合に、10時間仕事をした日はどう考えたらよいでしょう?

このときは、1時間は法内残業として、所定の時給で計算すればよく、必ずしも割増にする必要はありません。その結果、

所定時給×1時間+割増時給×2時間

が、その日の残業代になります。

さらに、残業を行わず、7時間で帰宅した日があれば、そのぶん1時間は、週40時間の枠を使用しなかった分として差し引いて考えることができます。

たとえば、火曜日と水曜日は7時間だけ仕事をして、定時で帰り、ほかの日は1時間以上残業をした場合を考えてみましょう。

この場合には、2時間分は土曜日に積み重ねられ、枠がいびつな形に変形することになります。
そこで、もし土曜日に仕事をした場合でも、2時間は通常の賃金、2時間を超える部分のみが40時間超えとして割増の対象となるわけです。

■1か月でまとめて残業時間を計算するわけにはいかない。

残業代を計算するに当たって、月の総労働時間を算出して、その額から月の所定労働時間の合計を差し引いた時間を、月間の全残業時間として計算している会社もありますが、その計算方法では、実際には法律で定められた正しい残業時間と残業代の計算はできません。このことは、これまでの説明でもうお分かりだと思います。

ただ、そのようなまとめた計算方法を可能とする、労働時間管理方法も存在しないわけではありません。その管理方法についてはまた追って説明します。
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